22/7PV『あの日の彼女たち』の可能性

久しぶりの更新です。かねてからちょくちょく耳にしていた秋元康総合プロデュースのアイドルユニット22/7。正直、今までほとんどノータッチで半年ほど前から公開されていたPVも全く見ていなかったのですが、今回知り合いからおススメされたのでPVに関しての感想を書いていきます。

22/7のPVは、1つのPVに一人のキャラクターがフォーカスされる形で現時点では7人のPVが公開されている。キャラクターデザインは『けいおん』でおなじみの堀口悠紀子。監督は若林信、原画には小林恵祐、大山神、江澤京詩郎ら『エロマンガ先生』の8話で話題になった若手がメインで張っている。アニメーション制作はClover Works。このスタジオ、自分は今回初めて知ったがA-1 picturesの高円寺スタジオを新設したらしい。

 

肝心のPVの中身はそれぞれのアイドルたちの他愛もない日常の一コマを切り取ったようなシーンから構成されている。電車での帰路やレッスンでの一場面など、そんな何気ないシーンを圧倒的に「世界」の側を豊かに描くことで、アニメーションとして成立させているのだ。

www.youtube.com

たとえば、このPVの1:25からのカット。壁越しに戸田ジュンがこちらを覗くカットだが、壁の陰に注目してほしい。淡い逆光によってキャラクターの影が壁に反映されている。一般的なテレビシリーズではまず拝めないような撮影のこだわりだろう。このほかにもライティングにおけるこだわりは随所に見受けられる。また、できる限りBGMを使用しないことで、彼女たちの日常生活の空間、「世界」を大切にしていることが分かる。「世界」の側を淡々と、徹底してリアルに描くことでリアリズムを獲得する。高畑監督から近年の京都アニメーションへの流れ、自然主義的リアリズムのようなこだわり感じることが出来る。

一方、肝心のキャラクターとしての彼女たちの内面や物語性は、ほとんどと言っていいほど描かれていない。「このキャラクターだからこの場所で○○している」といったような必然性が意図的に排除されているのだ。実際に若林監督が自身のTwitterにて、脚本家がいない旨をツイートしている。

 このことは特にエヴァ以降のテレビアニメがファンの2次創作に対して自覚的な立ち位置をとり、そういった創作活動も取り込みながら駆動している背景(オリジナルなきコピー)を考えれば納得だろう。言い換えれば、このPVも若林監督の22/7に対する2次創作だと捉えることもできるだろう。22/7のプロジェクトにおいてオリジナルな物語性は初めから用意されていない。ファンはそれぞれのPVで描かれる人間関係やキャラの断片から、各々創発的に自分だけの「物語」を読み取っていく。と、ここまで書いてきたがファンによる2次創作の設定を公式側が作品に取り入れるといった現象自体は珍しいものでもないし、そうした活動との両輪でゼロ年代以降のアニメ文化は歩んできたと言える。しかし、22/7のようにここまで自覚的なプロジェクトは今までなかったように思うので今後が楽しみである。